俺がショアジギングをしている時の事だ。
その日はシュモクザメが大量に沸いている日で、サーフの足元まで入ってきてベイトを追い回しているような状態だった。
晩秋の頃に、こういう日が駿河湾では何日かある。
ダイビングをやる連中は、ハンマーヘッドとか言って大喜びする所だろうが、釣り人にとっては迷惑この上ない。
幸い、俺にシュモクザメはヒットしなかった。
俺のLSJ(ライトショアジギング)タックルでは結構厳しい戦いを強いられた事だろう。
青物とのファイトなら大歓迎だが、鮫とのファイトはご免こうむりたい。
俺の20m程横でジグを投げていた兄ちゃんが、
「ソウダ喰われた~」
と叫んでいる。
ジグにヒットしたソウダガツオを巻き取る際に、シュモクザメが喰いついたようだ。
シュモクザメはおとなしいなんて、足元まで入り込んできて荒ぶる奴らを見ていると、とてもそんな事は言えない。
そんな事を思いながら釣りを継続していると、少し離れた所で釣りをしているおっさんの竿が弓なり弧を描く。
ジグを喰ったのか、ジグに喰いついた魚を喰ったのか分からないが、とうとうシュモクザメがヒットしたのだ。
釣り場の全員が固唾を飲んで見守る中、ベテランらしいおっさんは見事な竿捌きでシュモクザメを寄せ、最後は後ずさりしながらランディングした。
1mを超えるシュモクザメが、ビッタンビッタンとゴロタ浜で暴れている。
おっさんは流石に荒ぶる鮫の口から針を抜くのにはひるんだようで、中々フックアウトできない。
浜で5分程格闘し、ようやくフックアウトできたようだった。
写真でも撮るのかと思ったが、おっさんはシュモクザメを足で転がしながら海へリリース。奴は元気に泳いで海へ帰っていった。