竿と銛を担いで歩いた日々

1980年代生まれの底辺系釣りバカが、釣りと魚突きの思い出を綴るブログ。思い出した事を書きなぐっています。

ハタを突く【魚突き】

水深10mの海底で俺はうつ伏せになっている。

腰につけたウエイトで浮力を殺し、酸素の消費を抑える為、ジッと海底に潜んでいる。

 

右手に持ったヤス(銛)をそっと伸ばし、銛先で岩をそっと撫でる。

銛先が岩を擦る音がカリカリと聞こえる。

 

この微妙な音が魚を呼び集めるのだ。

 

好奇心と恐怖の狭間で揺れ動く彼らを脅かさないように、俺はそっと下を向き能面のような顔をして数を数え始める。

 

うつ伏せの状態で首を上げ前方を向くと、首筋に余計な力が掛かって息が持たなくなるし、鎌首をもたげるような様は殺気ムンムン、臨戦態勢のヤバい奴にしか見えないからだ。

 

30秒数えてそっと目線を上げると、数匹のチャリコ(真鯛幼魚)と30cmくらいのハタが俺の目の前をウロウロしている。

少し遠巻きにしてメジナの群れが見え、更に奥の岩からは40cmくらいのハタが顔を出したり引っ込めたりしている。

 

奥のハタが獲りたいが、こういう時に欲を掻くのは良くない。

俺はヌゥーッと銛先の狙いを手前のハタにつけた。

 

ゴムから手を放し、銛を放つと銛は真っ直ぐにハタの胴に命中する。

白い魚肉がパッと散るのが見え、猛烈な勢いで暴れるハタを足元の岩に押し付けて銛先を貫通させると、魚体が抜けないように銛先を抑えながら俺は浮上を開始した。

 

ロングフィンを上下に動かし浮上しながら、獲ったハタを見つめる。

浮上する際の水流でユラユラと動きながらも、彼は自分を貫いた銛から脱出しようともがいている。

もがく度、緑色に見える血液が流れ出ていくのが見え、命が失われていくのを感じる。

 

いつも、これ以上は考えない。

 

そして、だんだんと近づいてくる水面を眺めながら、俺は浮上を続ける。

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※この記事は魚突きにおける過荷重(マイナス浮力)を推奨するものでは無い。

※魚突きのポイントに関する質問には一切答えられません。