俺が中学生の頃の話だ。
俺は兄と妹、それから東京から来た従兄弟と一緒に、隣町のお祭りへ向かった。
漁協がやっている、ニジマスの掴み取り大会があるのだ。
川の浅瀬に石で覆われたプールが作られ、そこにニジマスが沢山離されている。
何匹でも取り放題、そんな良い時代があったのだ。
プールの周りには参加者がズラッと並び、うずうずしながら開始の合図を待っている。
俺達もプールの周りに陣取り、ニジマスたちを観察していた。
大体30センチくらいのニジマスが多いが、3匹だけ50センチを超える大物が混じっている。
俺達の狙いは決まった。
兄が1匹、俺が1匹、まだ小学生だった妹と従兄弟で1匹。
どれか1匹でも大物が取れれば良いと考えての作戦で、俺達はそれぞれ割り当てた獲物に飛び掛かるべくじっと息を凝らしている。
開始の合図と共に、俺と兄はそれぞれの獲物の所へダッシュ。
川なんぞお祭りでしか入らないような連中とは違い、俺達は年中、川だの海だの森だのを駆けずり回っているのだ。
おずおずと川に入る参加者を尻目に、たちまち俺も兄も目当てのニジマスに飛びつき、大物をゲットした。
上出来の結果に顔を綻ばせ、妹と従兄弟チームの行方を目で探す。
妹は開始早々転んで脱落したようだ。
涙目になって川に座り込んでいる。
従兄弟はどうだ?
探すと、奴もプールの中に尻もちをついて座り込んでいた。
しかし、その腕には一抱えもある程の丸太のようなニジマスが抱えられている。
破顔一笑、だが俺達は忙しい。
ビニールに大物のニジマスをぶち込むと、手あたり次第に普通サイズのニジマスを獲り始める。ニジマスもパニックになっていて、面白い程手掴みで獲れた。
結局、俺達が獲ったニジマスは30匹以上に上った。
獲ったニジマスは全て河原で鱗を取って、ワタを出し家に持ち帰った。
折しも、福島から祖父母が遊びに来ていたタイミングで、ニジマスの塩焼きを振る舞う事ができた。
夏の日の、良い思い出である。